今月の特別食は、「蝉時雨 夏のフレンチ」と題し、8月12日の昼にご提供いたしました。夏の盛りにぴったりの、旬の食材とフランス料理の技法が並ぶお食事となりました。
そんな今回のメニューはこちら!

まずは前菜の「キャロットラペ」です。
「キャロットラペ」はフランスでは家庭やお惣菜屋さんに並ぶ定番の一品です。

千切りにした人参に1%ほどの塩をふり、しっかりと水分を絞り出していきます。
ここで厨房のスタッフが話していたのは、「この段階で塩味を決めきらないと、あとから調整しても味がぼやけてしまう」ということ。シンプルな料理ほど、最初のひと手間が仕上がりを決めるのだそうです。
柑橘のさわやかな酸味とレーズンの甘みが重なり、暑さで食欲が落ちやすいこの時期にもすっと箸が進む前菜になりました。

続いてメインの「和牛のビーフシチュー」です。
ビーフシチューはフランス・ブルゴーニュ地方の郷土料理「ブフ・ブルギニヨン」を土台にした煮込み料理です。
今回使用したのは、脂の入り方が美しい和牛のバラ肉。

これを赤ワインに浸し、一晩じっくりと漬け込みます。
翌日には肉の色つやもすっかり変わり、ここから先の仕上がりを左右する大切な工程です。

その後、トマトや人参、玉ねぎなど様々な野菜から煮出したスープに移し、およそ2時間かけて静かに火を入れていきます。



時間をかけて丁寧に煮込むことで、お箸でもほどけるやわらかさに仕上げていきます。
ちなみに、洋食でよく耳にする「フォン・ド・ヴォー」の「ヴォー」は子牛のこと。
成牛からとるだしは「フォン・ド・ブフ」と呼び分けるそうで、同じ食材でも成長すると名前が変わるのは面白いですね。
そしてもうひとつ。
事情により牛肉を食べられない方には、同じ工程・同じソースで、豚肉に置き換えたシチューをご用意しました。
「食べられないから別の献立」ではなく、「同じ献立を、その方の形で」。厨房が毎回工夫を重ねているところです。
次は、「枝豆のポタージュ」です。日本の夏の味覚を、フランス料理のポタージュに仕立てました。
なめらかに仕上げているので、噛む力や飲み込む力が気になる方にも召し上がっていただきやすく、それでいて枝豆の香りははっきりと残ります。
淡い緑色が器に映え、目にも涼やかな一品です。
デザートは、「桃のブランマンジェ」です。
ブランマンジェとは、フランス語で「白い食べもの」を意味し、その名の通り白く仕上げる冷菓に、旬の桃を合わせました。
桃をピューレにし、生クリームとゼラチンを加えて冷やし固めます。仕上げにのせるのは、別に炊いた桃のコンポート。
ここでのポイントは、皮を一緒に煮ることで、皮の色素が移りあの澄んだピンク色が生まれるのだそうです。

着色ではなく、素材を生かした調理に、料理人としての知識の深さを感じます。

お食事が一斉に並んだ瞬間、器の上に夏の色が集まりました。

ご入居者様からは「見た目が涼やかできれい」「やわらかくて食べやすい」といったお声が寄せられ、見た目の美しさと食べやすさの両方が伝わる、特別食ならではの一皿となりました。
そしてこの日、心に残る出来事がありました。
つばさの杜のお食事をいつも心待ちにしてくださっているご入居者様がいらっしゃのですが、ご病気のため召し上がれる量はほんの少し。
それでも「いつも料理を作ってくれるシェフに、感謝を伝えたい」とのご依頼をいただきました。
お部屋にシェフが伺うと、日々おいしいお食事を届けてくれていることへの感謝を、ご自身の言葉で伝えてくださいました。
たくさん食べることはできないけれど、それでも本当に幸せなのだと、そうおっしゃっていました。
お食事は栄養を摂るためだけのものではなく、その日を、そして日々を少し特別にしてくれる時間でもある。
そのことを、あらためて教えていただいたひとときでした。

つばさの杜の食事は、これからも「人が最期まで楽しめるのは食事だからこそ、その食事は最高のものを提供したい」という思いを基に、味はもちろん、医師・看護師・ヘルパー・厨房スタッフなど多職種が連携し、ご入居者様お一人おひとりに合わせた食事の提供に努めてまいります。
気になる方は是非ご相談ください。

