今回の特別料理は、春の訪れを感じる旬の「鯛」をテーマにした「鯛づくし」をご用意いたしました。

この時期の鯛は「のっこみ」と言って、産卵前に浅瀬を泳ぎ、一年で最も脂を蓄えている旬真っ盛り。
そんな旬の鯛を丸ごと5本使い切った贅沢なコースとなりました。

こちらが今回の主役。神経締めされた新鮮な真鯛です。
素材選びの段階から「ご入居者様に最高のものを」という厨房スタッフのこだわりが詰まっています。

まず調理の最初に取りかかるのが、出汁づくりです。鯛の兜や骨を昆布と一緒に鍋に入れ、じっくりと煮込んでいきます。

この出汁が今回のコースの土台。
炊き込みご飯や潮汁など、さまざまな料理にこの出汁が活かされています。
鯛の旨みをとことん引き出した一番大切な仕込みです。

続いて一品目の「鯛の松皮造り」。
松皮造りとは、鯛の皮目に湯引きをすることで、皮がきゅっと縮み、その見た目がまるで松の木の幹のように見えることからこの名がついた日本料理の技法です。

皮目に旨みがしっかりと閉じ込められ、身はしっとり。彩り豊かなつまを添えて、目にも春らしい一皿に仕上げていいきます。

続いては少し趣向を変えて「鯛の中華蒸し」です。
鯛の切り身を椎茸や笹打ちにしたねぎと一緒にふっくらと蒸し上げたら、ここからが腕の見せどころ。
蒸し上がった鯛と野菜に熱した油をジュワッとかけて仕上げるのですが、その直前にお醤油を少しだけ垂らしておくのがポイントです。
熱々の油が醤油を焦がすことで、なんとも香ばしい風味が生まれます。
中華料理では鯉のお料理などでよく使われる伝統的な技法なのだそうです。

まさにこの瞬間。
湯気がもうもうと立ち上り、厨房中に香ばしい香りが広がります。
そして、添え物の人参にもぜひご注目ください。

桜の花びらの形に飾り切りされているんです。
こうした小さなところにも「食で季節を感じていただきたい」という職人の想いが現れています。

「鯛の胡麻和え」は、鯛のお腹まわりなど身が薄い部位を使った一品です。
鯛を余すことなく使い切るという厨房のこだわりがまさに形になったお料理で、胡麻の香ばしさと万能葱のシャキッとした風味が鯛の旨みを引き立てます。

そして、この日のハイライトとも言える「鯛の炊き込みご飯」。
最初に取った出汁と鯛の切り身を一緒にお米を炊き上げました。

この土鍋を開けた瞬間のインパクト、写真からも伝わるでしょうか。
出汁をたっぷり吸ったご飯の上に鯛がまるごとドーンと鎮座しているこの光景は圧巻です。
炊き上がってすぐに、この土鍋を持ってご入居者様のお席を回らせていただき、蓋を開けた瞬間に広がるできたての香りを楽しんでいただきました。
「わぁ、いい匂い!」「すごいねぇ」と、あちこちから歓声が上がっていました。
お料理は「味」だけでなく「香り」も大切なごちそう。
こうしたひと手間が、食事の時間をより豊かなものにしてくれるのだなと改めて感じます。

「鯛の潮汁」は、鯛の旨みがやさしく染み出た澄んだお出汁の上品な味わい。
鯛づくしのコースの中でほっと一息つけるような、心も体もあたたまるお椀です。

最後は「かん味・桜羊羹」で締めくくり。ほのかな桜の香りと上品な甘さが、鯛づくしの余韻をやさしく包み込んでくれます。

そして出来上がったお膳がこちら。

今回は鯛を丸ごと5本、頭から骨、腹身に至るまで一切無駄にすることなく使い切りました。
一つの食材からこれだけのバリエーションが生まれることに、料理の奥深さを感じていただけるのではないでしょうか。

召し上がったご入居者様からは、「お刺身がとろけるようで、こんなに美味しい鯛は久しぶり」「全部鯛なのに一品一品まったく違う味わいで飽きなかった」「中華蒸しが珍しくて嬉しかった」「人参が桜の形になっていて、春だなぁって。こういう心遣いが嬉しいのよね」「炊き込みご飯の蓋を開けてもらった時、思わず拍手しちゃいました」と、たくさんの嬉しいお言葉をいただきました。

皆さま笑顔でお箸を進めていらっしゃって、私たちスタッフも本当に幸せな気持ちになりました。

つばさの杜の食事は、これからも「人が最期まで楽しめるのは食事だからこそ、その食事は最高のものを提供したい」という思いを基に、味はもちろん、医師・看護師・ヘルパー・厨房スタッフなど多職種が連携し、ご入居者様お一人おひとりに合わせた食事の提供に努めてまいります。