5月の特別食は、初夏の訪れを感じる「初鰹膳(はつがつおぜん)」をお届けしました。

今回はなんと、鰹を余すことなく味わい尽くす「鰹尽くし」のお膳です!
一つの食材を様々な調理法で表現する、日本料理の真髄が詰まった一膳です。

ちなみに春から初夏にかけて獲れる鰹を「初鰹」と呼びます。
秋の「戻り鰹」が脂のりの良さで知られるのに対し、初鰹は赤身本来の旨味と爽やかさが楽しめる、まさに今の季節ならではの贅沢です。

そして今回、厨房に届いたのがこちらの立派な鰹。銀色に輝く皮目と、引き締まった魚体。
見るからに鮮度の良さが伝わってきます。この鰹を一尾ずつ、厨房スタッフが丁寧に手作業で捌いていきます。

施設の食事で一尾から捌くというのはなかなか見られない光景かもしれませんが、つばさの杜の厨房では「人が最期まで楽しめるのは食事です。その食事は最高のものを提供したい。」という思いのもと、下処理から手仕事を大切にしています。

鰹を手で持ち上げながら三枚におろしていく光景。
普段あまり見かけない捌き方かもしれませんが、これは長年培った技術で、手早く三枚におろす方法だそうです。

きれいに柵取りされた鰹の身。赤身の鮮やかな色合いと、皮目の銀色のコントラストが何とも美しいですね。
この一本一本を、それぞれのお料理に合わせて切り分けていきます。

さて、ここからが本番。まずご紹介するのは「鰹のたたき 香味やさい添え」です。
表面を強火で炙り、外は香ばしく中はしっとりとした生の食感を残す、鰹ならではの調理法です。

バーナーを使って一気に表面だけに火を入れていきます。
皮目はパチパチと音を立てながら香ばしく色づき、中の赤身はみずみずしさを残したまま、絶妙な火加減が腕の見せどころです。

そして、炙り上げた鰹を丁寧にスライスしていきます。
断面をご覧ください。香ばしく炙られた皮目と、中心の鮮やかなルビー色の赤身。
このコントラストが食欲をそそります。仕上げに生姜やみょうが、万能葱などの香味野菜を添え、特製のたれと一緒に召し上がっていただきました。

続いてご紹介するのは「鰹れあかつ 割り黄味そうす」。「レア」+「カツ」、つまり鰹を衣で包んでさっと揚げ、中はあえてレアの状態に仕上げた一品です。

ご覧の通り、衣はきつね色にカリッと揚がっているのに対し、中心の鰹はほぼ生のままの美しい赤色を保っています。実はここに、厨房ならではのこだわりが隠されているんです。
鰹は油から引き上げた後も、衣や身の中ではしばらく予熱で火が入り続けます。
だからこそ、揚げ加減がちょうど良くなるまで待ってしまうと、お皿に運ばれる頃には火が入りすぎてしまうということ。「まだ少し早いかな」というところで油から引き上げる、この絶妙な見極めは、長年の経験と知識があってこそ成せる業です。

そして合わせるのは「割り黄味そうす(割り黄身ソース)」。
今回はひとつひとつ手作業で仕立てています。卵黄を丁寧に裏ごしして、なめらかな口当たりに整えるところからスタート。
この一手間を加えることで、舌触りがぐっと上品に仕上がるんです。そこに出汁を少しずつ加えながら、分離しないように丁寧に混ぜ合わせていきます。

三品目は「鰹酒盗和え 刻み万能葱」。「酒盗(しゅとう)」とは、鰹の内臓を塩漬けにして熟成させた高知県の伝統的な珍味で、「酒が盗まれるように無くなってしまうほど飲みすすんでしまう」ことからその名がついたと言われています。鰹を鰹で味わうという、なんとも贅沢で粋な一品に仕上がりました。

お膳の主役となるのが「鰹御飯」。ふっくらと炊き上げたご飯に、甘辛く煮含めた鰹の時雨煮と、ピリッとした刺生姜をのせて。途中から温かい茶出汁を注げば「鰹茶漬け」に。一杯で二度楽しめる、心憎い演出です。

締めの「水菓子」には、季節のめろんをご用意いたしました。鰹のしっかりとした旨味の余韻に、ひんやりと甘い果実がすっと寄り添う、初夏らしい締めくくりです。

ご入居者様からは、
「鰹をこんなに色々な食べ方で味わえるなんて、贅沢ねぇ」
「れあかつって初めて聞いたけれど、衣はサクサク、お魚はしっとりで美味しい」
「最後のお茶漬けが本当に美味しくて、ペロッと食べてしまいました」

と、嬉しいお声をたくさんいただきました。

つばさの杜の食事は、これからも「人が最期まで楽しめるのは食事だからこそ、その食事は最高のものを提供したい」という思いを基に、味はもちろん、医師・看護師・ヘルパー・厨房スタッフなど多職種が連携し、ご入居者様お一人おひとりに合わせた食事の提供に努めてまいります。

気になる方は是非ご相談ください。